英語力

非帰国子女・長期留学未経験者が外資系企業に転職しようと考えたとき、一番の懸念が英語力かと思います。外資で働いている人は皆ネイティブスピーカー並みの流暢なビジネス英語を使いこなし、多少英会話ができる程度の人間は鼻で笑われるのではないか。私もそう思っていたのですが、転職活動を始めて拍子抜けしました。

転職活動を始めた頃、募集要項に「TOEIC600点以上」記載された外資系企業の求人票を見つけました。正直、TOEIC600点レベルでは業務を英語でこなすことは、かなり難しいと思われます。そう転職エージェントにお伝えしたところ、事実そうなのですが、「英語ができるビジネスパーソン」の需要に対して供給が全く追いついておらず、「英語にアレルギーがなければOK」などという求人がざらにあるようなのです。

少し話が逸れますが、就職後の話をすると、もちろん海外長期滞在者でネイティブスピーカー並に英語が話せる人は多くいますが、同時に全く話せない人もいます。

また、語学力と同時に「論理力」「異文化コミュニケーション力」が実務では非常に重要です。論理力とはそのまま、自分の考えを論理立て、わかりやすく説明する能力です。これが欠けていると、アメリカに5年住んでいても、10年住んでいても、同僚やビジネスパートナーにとっては、何を言っているのかわかりません。そもそも、日本語でも意味不明です。語学以前の問題ですね…。

「異文化コミュニケーション力」は、二種類に分類できると私は考えています。ひとつは「欧米的な考え方を理解する能力」、もしくは「自分と異なる文化に同化しないが拒否しない」態度。両者は、異文化に対する全く異なったアプローチ方法です。

「欧米的な考え方を理解する能力」とは、欧米的な理性・論理、効率性重視する考え方を理解できる、ということです。対極にあるのが日本的な情や根回し、根性論でしょうか。これはある程度頭で理解可能なものだと思います。

次に「自分と異なる文化に同化しないが拒否しない」態度について。人間は、驚くほどこれができないというのが、私の実感です。日本人とアメリカ人は、几帳面さや物事の評価の仕方、表現の仕方など、多くの面において国民性が真逆だ…とよく思いますが、それを現実として受け止め(流して?)、ともかくどうやれば目の前の問題が片付くか…と考える力です。

これができないと、欧米人の上司に対して、「自分はこんなに残業してがんばっているのに理解してくれない」と恨みを募らせたり、逆にアメリカ人が日本のオペレーションに、アメリカの「ベストプラクティス」を押し付けたりすることになります。

「異文化理解」については、『異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』という書籍が素晴らしく参考になります。外国の文化を知ることで、自国の文化も相対的に見ることができます。非常におすすめの書籍です。

また、英語でもOKであれば、”The Geography of Thought: How Asians and Westerners Think Differently...and Why”
も面白いです。こちらは『異文化理解力』よりもう少しアカデミックな内容ですが、読むと理解が深まります。実際に欧米人の上司に説明するときに、この書籍を引用したこともあります。

話がかなり逸れましたが、英語力について具体的な話をしますと、実務で使う分にはTOEIC800点程度がボーダーになる気がします。もちろん、テストの点だけが高い人やその逆もいるので、一概には言えませんが、そのレベルの人であれば、スムーズではなくても英語でなんとか要望を伝えられたり、表現を調べながらでも、英文でメールが書けるギリギリのラインだと思います。

また、英会話が必須な場合は、必ずネイティブスピーカーがインタビューに入るので、最終的にはテストの点でなく、会話で判定されます。