- 事業撤退・解雇のリスク
- 異文化とのコミュニケーションストレス
- システムや業務フロー変更に時間がかかる
1. はずばり、事業撤退・解雇のリスクです。外資では簡単に解雇されるという印象があるかもしれませんが、余程パフォーマンスが悪かったり、モラル的に問題があったり、会社の経営状態が悪くない限り、個別の社員が解雇されることはそんなにありません。日本支社で働いている限り、日本の法律で守られていますしね。
それより割とよくあるのは、事業撤退・縮小により、支社自体がなくなってしまうことです。もしくは支社は存続していても、部署が無くなるというケースもあります。これは、頭でわかっているつもりでも、実際に自分の身に起こってみないと実感がわきません。
外資を渡り歩いている人は割とこういった種類の解雇に遭遇していることが多く、下手すると事業撤退で転職した先がまた撤退、ということも十分にあり得ます。
運が悪いと言えばそれまでですが、採用担当によっては「将来性のない事業(部門)を見抜けない人材」という印象を持つ人もいますので、なるべく連続して事業撤退に遭遇するのは避けた方が良い、というのが個人的な意見です。そうでなくても、経済的・精神的に何度も解雇されるのは負担が大きいでしょう。
では、どうすれば事業撤退に遭遇するリスクを軽減できるのでしょうか?上場企業の場合は企業のウェブサイトにIR情報が掲載されているので、それを見ると良いと思います。
ただ、普段そういった情報を読みなれていない人には難しいので、知人に詳しい人がいたら確認をお願いするとか、それもだめならせめて株価の推移だけでもチェックし(Googleで”社名”+”stock”と検索すればグラフが出てきます)、大きな変化があった場合はニュースを検索して原因を調べておくくらいはしておいた方が良いと思います。
また、撤退とまではいかなくとも、組織再編で全く組織構造が変わってしまったとか、上司が総入れ替わり、ということもあり得ます。いずれにせよ、一般的に外資は安定した環境で長く働く場所ではないので(もちろん例外は多数あります)、常にCVをアップデートし、何かあったらすぐに転職できる状態にしておく必要があります。
次に、2. 異文化とのコミュニケーションストレスについてです。自分とは異なる文化を持つ同僚と仕事をすることになるので、阿吽の呼吸、空気を読む、ということは期待できません。すべて口頭かメールで明確に指示する必要があります。また、指示したこと以外を、気を利かせてやってくれるということも期待できません。
また、完成度に対するレベルの違いもあります。日本の場合、「完成」というと全くミスのない100%の最終版という認識ですが、海外では必ずしもそうでなく、日本人の感覚だとミスだらけでまともに外に出せないようなものを納品されることもよくあります。
もちろん相手に悪気は無く、「完成」に対する認識が違うだけなのです。こういった場合に感情的になったり、仕事倫理を説いたりしても意味がないので、淡々と修正依頼を上げるしかありません。
また、日本人の間では説明しなくてもわかるようなことも、逐一説明する必要があります。「これが普通だよね」という感覚が通用しないのです。
少々無理な喩えをすると、近年面白おかしく取り上げられる「ゆとり社員」の行動でしょうか。取引先へのお詫びに持っていく菓子に、アルフォートを買ってきた、等。これは、日本社会ではアウトかもしれませんが、外資で働く場合は買ってくる内容を指示しなかった上司が悪いのです。
異文化コミュニケーションというと、グローバルでかっこよく、フレンドリーなイメージを持つかもしれませんが、仕事となると、自分が意識すらしなかったことを逐一言語化し説明する作業の連続となります。これを面白いと思える人もいれば、そうでない人もいます。
特に、日本社会においてコミュニケーション能力が高いと評価されてきた人は、すなわち「空気を読む」式のコミュニケーションスタイルに適応性が高いということなので、逆に外資でストレスを感じやすいというケースもあります。
最後に、「3. システムや業務フロー変更に時間がかかる」についてです。外資といえば意思決定も実行もスピーディというイメージがあるかもしれません。それは間違ってはいないのですが、ことシステムや業務フローとなると、非常に時間がかかります。理由は3つあります。
一つ目は、日本に支社を持つような外資系企業は大企業であることが多いので、全社的に影響があるような変更には時間がかかること。まあ、これは日本企業でも同じですね。
二つ目は、大きな意思決定をするのが本社であることが多く、日本支社の意見を通すのが簡単ではない、ということです。そもそも、日本で問題となっていることが、本社では問題とは認識されていない、という場合もあります。重要度が低いとされた問題は、放置され続けます。
最期に三つ目は、エンジニアが無理をしない。そもそもシステム改修というものは、予期しない問題発生や仕様変更の連続です。日本の場合、そういったことが起こっても最期にはエンジニアが死にもの狂いで仕上げる、ということをしますが、海外の場合はその分だけ普通に延期します。
明確に期日が示されていないプロジェクトの場合はあまり期待しない方が良いので、それが実施されない前提で自分の仕事を進めた方が良いですし、仮に期日が設定されていても、あまり信用しないことをおすすめします。
なんだか、良いところより悪いところの方が長くなってしまいましたが、別に外資が悪いところだというわけではなく、単に説明が詳しくなってしまっただけです。